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「町の研究家」、まだまだ建築資材データベースを
追いかけるぞ!
2026.04.14
パラメトリック・ボイス
Unique Works 関戸博高
相変わらず東京と十勝帯広で、月の半分ずつ二拠点生活をしている。向こうでは自転車であち
こち動き回っているので、「自転車おじさん」と自己紹介している。また最近、このコラムを
書いたり、建築資材データベース(SekiDB)を思案したりするなかで、自分をどう紹介する
のがよいか考え、「町の研究家」を自称することにした。生成AIの成長のおかげで、「研究」
は格段にスピードが上がり、内容も深まってきた気がしているので、この言い方が、私はとて
も気に入っている。
そこで今回は、「町の研究家」として、SekiDBの今後の方向性を、日本のBIMとAIを取り巻く
状況の中に位置づけることから始めた。調査対象として、BIMに関する幅広い情報発信を行っ
ているArchiFuture Web Magazineで、これまでどのような意見や論考(商品説明は除く)が
掲載されてきたのかを、生成AIで検索・要約してみた。日本語がまともになったと言われる
GPT-4が使えるようになってから3年。この間に発表されたもののなかで、以下の2本のコラム
が興味深い方向を示していた。
①日建設計の山梨知彦さんの『壊れた電卓を眺めつつ、BIMと生成AIの融合を
考える』(230907号)。
山梨さんは、現状のBIMは情報量と精度が高すぎて人手での入力・整合に無理があるため、形
状入力から自動仮分類、概算提示、図面整理まで支援する仕組みが必要であり、その自動化を
生成AIが担えば、BIMは建築情報データベースへ進化しうると述べている。つまり、私の関心
に引き寄せると、SekiDBは「保管庫」だけでなく、BIM入力支援エンジンの知識源として位置
付けるほうが価値が出やすいということである。
②安井建築設計事務所の村松弘治さんの『BIMとAIの融合による持続可能な
建築』(241017号)。
村松さんは、BIMを基盤にBIツール(注1)や外部ソフトと連携することで、建材選定、数量
分析、廃棄物削減、リサイクル材活用、エネルギー効率向上が可能になると述べる。さらに、
AI活用により膨大なデータを短時間で分析し、包括的な課題解決へつなげられるとまとめてい
る。つまり、SekiDBをコストDBではなく、建築ライフサイクルDBへ育てるべきだと示唆して
いるように思える。
(注1)BIツール:Business Intelligence(ビジネス・インテリジェンス)ツールのことで、
データを見やすく整理し、分析し、意思決定に使いやすくする道具のこと。
これに私のコラムを加えると、日本のBIMとAIの関係の現状が見えてくる。
③『無謀だと言われてもやってみる価値があることはいくらでもある』(250703号)
SekiDBは、建材情報を一元化・構造化し、BIMと連携可能な形式で、性能、用途、施工条件、
JIS適合、法規、分類コードなどを備え、自動積算やFMにも展開できる、単なる製品カタログ
ではない実務向けの構造化メタデータ基盤であるべきだと述べた。
④『日本のBIMは「大ピンチ」か!?』(240716号)
日本ではBIMデータ連携が進まず、教育組織や産官学の連携枠組みも不足しているため、
SekiDBは当面、自前で分類マップ、教育資料、運用ルール、他社と共有可能な最低限の公開
仕様を整える必要があると述べている。
ここからが今回の本題である。
私の立ち位置(戦略)は、BIMソフトの外側で「建設資材データベース(SekiDB)」を組成
し、いわゆる「建築情報プラットホーム」を構築してHub機能を持たせる、というものである。
今は直接関わっていないが、2018年に「BIM-ECコンソーシアム」を立ち上げた時の基本戦略
と変わっていない。ただし、生成AI以前と以後では使える武器が違う。そのため戦術面では、
人手に頼るのか、AIに任せるのかという点で、全く異なる展開が可能になり、また必要にも
なってきた。このところの経過は省くが、現時点でSekiDBのプロトタイプは、議論に耐えられ
る程度にはできている。
そこで、さらに推進するためのプロジェクトチームを考えた。このチームには、少なくとも
4部門の専門家が必要である。従来であれば、よほど大きな組織でなければ一つの組織内にこ
れだけの専門家を揃えるのは難しかった。だが現在は、情報処理を含む作業の多くをAIが担え
るので、優秀な数人の個人によるプロジェクトチームでも十分ではないかと思っている。人間
に必要なのは、戦略に沿った的確な問い(プロンプト)を立てる力と、AIのハルシネーション
や情報の脱落を見抜く力である。現在、そのための協力者を探しているところである。

<SekiDB開発プロジェクトチーム>
❶マネジメントチーム:
PM・統括・ベンダー選定・資金調達・関連企業(建設会社・設計事務所・メーカー等)との
関係構築など
❷AI開発チーム:
LLMオーケストレーション・データエンジニアリング・品質KPIモニタリングなど
❸BIM開発チーム:
BIMソフトとの連携技術開発・IFC連携など
❹新サービス開発チーム:
SekiDBを情報Hubとして、多様な収益サービスを創出する
もう一つ書いておきたいことがある。営業(マーケット探索)についてである。実需調査のヒ
アリングに入る前に、マーケットのイメージを持ってもらうため、営業シミュレーターを作っ
てみた。

目的は、実際のヒアリングの代替として、設計事務所・施工会社・施設管理会社の仮想企業を
設定し、SekiDBの実需、つまり「利用するか否か」「どの程度利用するか」を試算すること
である。もちろん、リアルなヒアリングは不可欠である。ただ、それには時間とコストがかか
り、回答者の主観や利益相反も入り込みやすい。これに対して仮想企業アプローチでは、企業
規模・業務フロー・案件量・コスト構造といった客観的なパラメータを設定したうえで試算す
るため、論理的な検証や感度分析を繰り返すことができる。そうしてヒアリング担当者の視野
や感度を高めたうえで、「いざ出陣!」である。
また、SekiDBの価値提案は「設計→施工→FM運用を通じたSSOT(注2)構築」にある。した
がって、単一フェーズではなく、ライフサイクル全体で評価する必要がある。仮想企業を設計・
施工・FMの3種設定することで、バリューチェーン全体をカバーできる。シミュレーターのイ
メージは上記の写真のようなもので、現在は上記の表にあるパラメータをチューニングしてい
る。
(注2)SSOT:Single Source of Truth。「正しい情報はここだけにある」状態をつくる考え
方。つまり、1つのデータ源だけを“正解”とする考え方。
以上のようにSekiDBは、今後体系的に扱うべき段階にきているので、引き続き組成の到達点
をタイムリーに報告していきたい。


























