Magazine(マガジン)

コラム

スタイルが変わる

2016.06.28

ArchiFuture's Eye               ARX建築研究所 松家 克

英国がEU離脱を国民投票で決めた。今後、英国とEUの動向、そして日本への影響が気になる。
 
さて、本文。
早朝、眠気を背負って、“よっこらしょ”と駅に向かって急ぎ足で歩く急坂の横を颯爽と格好良
く走り登る真っ赤なロングノーズの低いボディの2~3人乗りモビリティ。この雄姿を最近よく
見かける。新風景の「生活スタイル」は、保育園か幼稚園、あるいは、買い物に向かう電動ア
シスト自転車に乗る若きママの姿。1982年公開のSF映画で、E.T.とエリオット少年が大きな
満月を背景に自転車で跳んでいるシルエットのワンシーンをふと思い浮かべる。
 
一時期の日本では、ミニバイクが駅前に溢れていた。最近は、電動アシスト自転車である。特
に中国では、ガソリンと排ガス抑制などの環境対策も兼ね合わせた電動バイクメーカーの台頭
が著しいという。この状況下、世界のベストセラーで50年以上売れ続けているホンダのスー
パーカブの電動式タイプが、2018年をめどに満を持して登場するという。
昨年の6月に自転車事故軽減措置法の一部が強化され、危険運転をした自転車運転者の講習制
度がスタートしている。電動アシスト自転車の急激な普及で交通ルールが後追いになり、幼児
や年寄りを巻き込む自転車事故が多発し、駐輪場の設計仕様も変わり、ドローンの展開で一部
改正された航空法と同様に、法律がやっと追いついたといえる。黒や赤の低い車体で、前後に
子供を乗せ、急坂を座ったままで颯爽と登るママらしき姿を見るとそのパワーのすごさと逞し
さと危うさ、スタイルの変化を感じてしまうのは私だけだろうか。
 
昨年、テラモーターズ社は、スマホのアプリと連動する世界初の量産型モデル『A4000i』を
披露した。ハンドル中央部にiPhoneが収まり、バッテリーの残量、速度などを表示。アクセル、
速度、GPSでの位置情報などの走行データを収集し、クラウド上で管理。ナビ機能や良く通る
道と時間による周辺の店舗などのレコメンドサービスやビッグデータ活用も可能。人工知能と
センサー、情報収集機能、ICTが取り込まれた電動バイクである。セグウェイ、エスティーバ、
ウォーカーと同様に人の移動に特化したパーソナルモビリティツール。故に日常の生活との密
着感が強く、生活スタイルに影響があり住宅や店舗などの設計への反映も考えられる。電動ア
シスト型のスポーツタイプへの発展の可能性もあり、心肺機能のチェック、呼吸、脈拍、距離
測定などとともに運動メニューなどの指針提示などが期待できる。宇賀神溶接工業製作の障害
者も乗れる電動アシスト自転車、ベンチャー企業のWHILLの四輪電動()いす、あさひの男性
版ママチャリ88サイクル、家電ベンチャーUPQ社のUSBチャージ機能付で折りたためる電動
アシスト自転車など、今後は、スマホとの連動で緊急時のブレーキ補助やAI機能での転倒防止
など安全対策も含め3Dプリンターなどでのパーツ製作の応用も期待したい。
 
それでは、建築業務のスタイルに変化はあるだろうか。当然だが、BIM環境の充実が進むと自
ずと変わらざるを得ない状況にある。現場では、電動バイクや電動アシスト自転車やセグウェ
イなどを利用し、備え付けのスマホでタブレットなどとリレーションを図り、IoTなどで相互
に確認しながらロボットアームや「HAL」などのパワードスーツで作業をすることもあるのか
も知れない。そして、何時の日かこのスマホが見えなくなり、ストレスを感じさせずに施工の
補助や支援などで業務に浸透していくに違いない。作業や生活のスタイルが、あらゆる面でデ
ジタル化へ変化している。前述のサイバーダイン社HALの開発者は、研究都市筑波研究学園に
ロボットと人間が共生する「サイバニックシティ」構想を昨年末に発表している。この進展を
叶わぬ夢ではあるが100年後にでも確認してみたい。ただいえることは、世界の良品としてい
くのは、私たちの責務であり、今後の重要な課題である。

松家 克 氏

ARX建築研究所 Gr.代表