「BIMのかたち Society 5.0へつながる建築知」
~将来のBIMと社会のつながりを見据えて
2019.07.17
一般社団法人日本建築学会の建築教育委員会、並びに教育手法・技術小委員会/BIM設計教育
手法ワーキンググループは、「BIMのかたち Society 5.0へつながる建築知」を7月10日に
彰国社より刊行した。
今回は、同書について紹介する。
現在、デジタル・テクノロジーが、これまでの建築のつくり方・働き方・学び方を刷新しつつ
ある。また、経済産業省が発信する「新産業構造ビジョン」「Connected Industries」に向け
たデジタル・テクノロジーの有効活用の視点から見れば、建築にかかわる情報共有は、専門分
野・業界にとどまらなくなってきている。一方、国は2030年を目標に「Society 5.0(超ス
マート社会)」の実現を目指し、現実空間とリンクしたデジタル仮想空間(サイバー空間)が
社会インフラとして構築される方向で整備をはじめている。BIMについては、グローバルに広
がる「Society 5.0(超スマート社会)」を背景に、ものづくりの技術的情報と意思決定情報の
共有を促進し、「つくる」行為への参加者を多種多様にしつつある。
このような状況の中で、Society 5.0が実現した時に、建築とそこに携わる仕事は一体どのよ
うになっているのか、それについて真剣に考察したのが同書だ。また、同書ではBIMをデジタ
ル・テクノロジー、Connected Industries、そして、Society 5.0へと少しずつ視野を広げ、
その実現に向けた動機を得るための「窓」として位置づけている。
BIMを窓として、デジタル・テクノロジーを背景にした、より豊かな生活・活動環境を最適化
する構築要素(建築物)としての建築、社会要素(情報社会インフラ)とつながるシステムと
しての建築、そして、その仕事について考えるきっかけを提供する一冊に仕上がっている。
内容は、序章である産業構造の変革と共有価値の創造から始まり、建築産業の問題点、BIMに
よる変革、建築と社会をつなぐBIMの3つの章から構成されており、エッセイや、他産業から
見た建築産業のBIMについての座談なども掲載。さらに、図版や重要用語解説が随所に盛り込
まれているほか、巻末付録には、BIMと社会的背景を理解するための重要語集が掲載されてい
る。BIMの戦略立案や実利を得るために役立つ有益な情報が掲載された一冊となっている。
同書は200ページ以上にも及ぶボリュームで、BIM設計教育手法ワーキンググループの委員を
中心とした産学各機関・組織の28名の有志によって執筆されている。設計事務所、ゼネコン、
教員、コンサルタント会社、製造業、造船業など、何らかのかたちで「設計」に関わる実務者
と教員を中心に構成されているため、経営的視点やプロジェクトの最前線に立つ視点など、さ
まざまな立場からの見方が掲載されている点が特長だ。
目次をご覧になれば、同書の内容がさらに掴みやすいので、同書の目次を下記に掲載する。
BIMを学びたいと思っている人はもちろん、まだBIMの必要性を感じていない人にもお勧めし
たい同書は、読者が興味を持つキーワード、話題、事例に注目して、断片的に拾い読みをして
もいいし、ページ順に通読してもいいように編纂されているという。
執筆陣も豪華な顔ぶれで、前田建設工業の綱川隆司氏や大成建設の猪里孝司氏、noiz / gluon
の豊田啓介氏、安井建築設計事務所の村松弘治氏、芝浦工業大学の澤田英行氏、熊本大学大学
院の大西康伸氏、ビム・アーキテクツの山際東氏、日建設計の安井謙介氏など業界の著名人が
名を連ね、非常に読み応えのある一冊となっている。
同書の価格は、3,000円(税別)で、書店などで購入が可能だ。