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ユーザー事例紹介

入力/修正工数を従来の1/10にする
全自動施工図作成システム<U’sFactory>

2019.09.24

3DCADを活用したITソリューションで建設会社や設計事務所が持つ問題の解決を図る
U’sFactory(ユーズファクトリ)。
同社が主軸として展開するBIM積算&全自動施工図作成システムの「BI For ARCHICAD」は、GRAPHISOFT社のARCHICADで作成した3Dデータを利用することで積算・施工モデルを作
成できるアドオンツールである。ARCHICADとともにアップデートされてきた「BI For ARCHICAD」は3Dモデル作成に加え、見積り作成と工程シミュレーションを行う「5D」を実
現するソフトとしてオンリワンの発展を遂げている。
同社代表取締役社長の上嶋泰史氏に、「BI For ARCHICAD」で強化された自動作成や最適化
の機能を中心に、同ソフトの特徴などについて伺った。

作業を10分の1にし熟練技術者不足問題を解決する技術
U’sFactory(神奈川県横浜市)代表取締役の上嶋泰史氏は、積算施工図モデル活用
の構想と開発をゼネコンに在籍時代の2003年より始め、16年間続けてきた。それを具現化し、
積算と工程シミンまでをBIMで一貫して行う「BI for ARCHICAD」はARCHICAD
がバージョン17の時からスタートして現在6年目を迎える。
BIMソフトの導入が広がりつつある現在であっても作業量が減っていない現状を上嶋氏は次の
ように説明する。「設計、積算、施工、購買の各部門で業務が分かれ、BIMソフトも別々のも
のが使われています。弊害として、意匠図、構造図、設備図に不整合が生じ、積算のためだけ
に別のソフトで擬似的なモデルをつくり直しています。本来はやる必要がないのにやらなけれ
ばならないことが山のようにありBIM化が進まない、というのは本末転倒な状況です」。この
大きな原因は、3Dモデル入力の手間がかかることにある。設計で3Dモデルを作成した後に起
こる変更や修正を含めるとその労力は計り知れない。「BI for ARCHICADでは従来のモデ
リングと修正作業を10分の1にするために開発しました」と上嶋氏は提言する。

       株式会社U’sFactory
       代表取締役社長 上嶋 泰史 氏

       株式会社U’sFactory
       代表取締役社長 上嶋 泰史 氏


効率向上のために上嶋氏が注力したのは、自動化である。「当初は入力された3Dのオブジェ
クトから積算していたのですが、そもそも入力と修正のルーティーンワークに時間がかかるこ
とに問題があります。BIM特有の煩わしさを改善するのであれば、自動化と最適化しかありま
せん。しかも、描いたオブジェクト同士の関係性をコンピュータが判断し、それぞれの高さや
などを自動的に最適化することで、ヒューマンエラがクリアされます」と上嶋氏。
ボタンを押せばコンピュータでさまざまな条件を加味して3Dモデルが自動生成される(図1)。
人間はその結果を確認し、必要な修正や変更をかける。発想の転換ともいえるアプローチは
「経験がものをいう世界だからこそ大事」と上嶋氏は強調する。自動モデリングと最適化機能
を実装して精度を高めることで、熟練した技術者の目にかなう積算と施工モデルを誰でも簡単
に導き出すことを可能にしているのである。「一旦でき上がったものを見て、納まりの根拠を
考えながら深堀りする方法に慣れている若手のスタッフにも親和性が高い」と上嶋氏は語る。


詳細な見える化と積算までできる自動化
建設にかかるコストは大別すると、躯体が3割、仕上げが3割、残りの4割が設備といわれる。
BI for ARCHICADで上嶋氏は直近の1年ほどで、金額の大きな躯体工事に対するアプローチを
捉え直したという。「特にRC造の鉄筋ではどの範囲にどのような種類が入るのかの『見える
化』に取り組みました。スラブと梁の取り合いでの納まりや床の開口部周りでの補強、また壁
同士の取り合いや開口補強、梁と柱の圧接箇所だけでなく、差筋などについては、コンクリー
ト強度と鉄筋の鋼材種別によって定着長さや納め方が決まり、数量に直結してきます。これま
では構造計算から積算ソフトへと飛び、計算式だけで鉄筋の数量を出し、ロス率をかけて契約
していました。それがBI for ARCHICADで建物全体にわたり具体的に鉄筋のフクや定着も含
め詳細に3D描画することで、例えば『D16の鉄筋が2410mmで何本必要』と算定され、切断
加工前の鉄筋定尺長さごとに何本ずつ使うかがすぐに算出されます」と上嶋氏。
BI for ARCHICADは積算だけでなく正確な拾いを元に購買ができるレベルに達しているので
ある。(図2)

 (図2)

 (図2)


足場の自動作成も、新たに追加されたなかで目立つ機能だ。建物の形状と条件を設定すれば、
どこに足場を立てる必要があるかを自動的に計算し、「一括足場作成」ボタンで足場の詳細な
3Dモデルが現れる。「単管足場は同じ高さで揃えると折れてしまうので、継ぎ手の位置を千
鳥状になるように配置します。より現実的な組み方を自動で計算します」と上嶋氏。傾斜地で
はメッシュの高さを判別して足場も自動的に調整される。実際の架足場モデルとして調整をす
れば足場図面として利用できるほか、すべての種類の部材が算出されているので、リース期間
や運搬費などを含めた実行予算として活用できる。(図3)

        (図3)

        (図3)


そして、明細だけでなく、概算時の建物の内部と外部の自動積算機能も強化された。「例えば
設計で柱割りだけが決まっている状態で、各部屋の仕上げの内容がある時、これまでは壁の種
類に合わせて雛形を呼び出してコストを算出していました。今バージョンでは、ゾーンと柱だ
けを描けば外壁や間仕切りがまずは自動的に作図されます(図4)。最適化のボタンを押すと、
壁と天井や柱との取り合いを見に行って綺麗にする。建具は、どの部屋の間にあるかを見に行
き、場所と用途から種類を判別します。建具の足元では、壁下地の種別を勘案しながら幅木を
省略することも自動的に行われます」と上嶋氏。実情に即した細かな仕様と設定の一つ一つに
は、ゼネコンに勤務していた時代を含めて設計と施工の現場に長く身を置いてきた上嶋氏なら
ではのこだわりが現れている。

 (図4)

 (図4)


パラメトリックデザインを活用した最適化の手法
「BI for ARCHICAD」バージョン22で大きく変わったのは、パラメトリックデザインになっ
ていることだ。柱と梁の取り合い部分、鉄骨柱や梁の耐火被覆などで、一方の部材の辺をもう
一方の辺に合わせて揃えることが簡単にできるようになった。「以前は数値を手入力して寸法
を変え配置し直してレイヤーを変えて置き換える作業が必要でしたが3Dで直感的にできる
ようになりました。まずは構造変換し、一括で自動的に変更してくれるのです」と上嶋氏はい
う。スラブの端部の減算処理についても同じように、点を追加して位置を調整する作業などが
省略され、自動化で即座にモデルが出てくる。それに合わせて自動生成される型枠材も端点が
合い、やはり積算までが連動する(図5)。「従来のモデル作成では、何かを修正すると別の
何かが変わり、点を追加する、辺を移動するといった作業を繰り返す必要がありました。しか
も施工図が作成されるのは、それからです。すべてのプロジェクトでかかっているこうした作
業を圧縮していくことは、業界にとって急務です」と上嶋氏は強調する。

 (図5)

 (図5)


鉄骨のモデルでも、データの連携で最適化が強化されている。「鉄骨ファブでよく使われてい
る鉄骨CADからIFCデータで変換してくる時、オブジェクトは中が空洞のマッチ箱のようにな
り、中心の位置が起点となっています。設計図や施工図では梁の天端から追って数値を確認し
たいのでBI for ARCHICADでは最適化のコマンドで基準点を梁の頂点にもていき変換しま
す。そして自動配置ボタンを押すと、フロアの階層を分けながら自動変更と配置を繰り返しま
す」(図6)。外壁材の取り付け下地となる胴縁も、意匠図と連動して自動発生させて鉄骨
CADに置き換えることができる。従来は仮の建具を入れて、胴縁を1本ずつ手で描いて、とい
う無駄な作業が必要だったところである。

 (図6)

 (図6)


上嶋氏を長年にわたって改善に突き動かしているのは、建築業界の真の効率化がもたらすメ
リットにほかならない。3Dモデルと連動して見積もりそしてガンチャートによる工程シミュ
レーションまでができる「5D」(図7)を実現したソフトとして、BI for ARCHICADはます
ます発展を遂げている。

 (図7)

 (図7)


「BI For ArchiCAD」の詳しい情報は、こちらのWebサイトで。

☆本ソリューションは、「Archi Future 2019」(10月25日開催)に出展しています。