マインドチェンジ
2020.04.16
パラメトリック・ボイス 芝浦工業大学 志手一哉
世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。我が国も2020年4月7日に新型コロナ
ウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令され、7都府県で外出自粛の要請が出
され、新型コロナウイルスの感染拡大を収束させるために人の接触機会を8割削減する目標が
掲げられている。昨今の日本における自然災害の状況を鑑みれば、豪雨や台風の季節が来る前
に新型コロナウイルスを終息させねばならない。そうしたことを自分の目標のひとつに置いて、
我々はいまできることをやるしかない。この先しばらくは、テレワークの可能性がある職種に
おいて在宅勤務の導入が増えていく。その中で、産業全体の約8%を占める就業者数を抱える
建設業は、建設業界全体でデジタルワークに極限までチャレンジすべき時である。緊急事態宣
言が解除されるまでは速やかな工事現場の閉所も願う。官民の発注者の英断に期待したい。
多くの企業でテレワークが広がっているこの非常事態を期に、働き方が大きく変化するといわ
れている。私が勤める大学も当面の緊急事態措置の実施期間は学内施設を閉鎖、GW明けに開
始が延期された前期の授業は全てオンラインで実施することになった。このような方針の元、
4月から開始した学部生や大学院生のゼミをオンラインで行っている。ゼミをオンライン化す
るにあたり、オンラインミーティング、グループウェア、オンラインストレージを準備し、簡
単ながらも各ツールの運用ルールや使い方を整理して事前に共有した。学生が柔軟に対応して
くれたおかげで、何の事前練習をすることもなく、これらのツールを利用してゼミを順調に進
めることができている。また、私自身も研究室の予定やリマインドをグループウェアで発信す
るようにしている。とはいうものの、このような事態になる前は、オンラインでのゼミや授業
に懐疑的であった。しかし、それをやる以外に手段がなくなり、必要に迫られていざ実施して
みれば、オンライン化の良いところもたくさん見えてきた。例えば、face to faceのゼミより
も、自分自身がわかりやすく資料を作成するように気を付けるようになったし、共同作業で資
料を効率的に取りまとめできるような気もしている。また、オンラインミーティングの画面共
有は、プロジェクターで投影するよりも小さな文字が見やすいし、学生が扱っているソフト
ウェアを操作してもらいながら研究指導ができる。しかし、まだゼミは始まったばかりである。
学生、院生の研究が進むにつれて、もう少し難易度の高いツールの使いこなしや環境の強化を
考えなければならない場面が出てくるだろう。
急な展開にも関わらずゼミのオンライン化がスムーズに出発している理由を考えると、我々が
扱う情報のほとんどがデジタル化されていたことに気づかされる。これまでも、VoIP技術で通
話をしていたし、自筆のサインや押印が必要な非デジタル文書でさえ、写メやスキャンで画像
データ化してメール添付で処理をしていたわけである。扱う情報がデジタル化されているにも
関わらず、それを扱う我々の行動がアナログだったとすれば、新型コロナウイルスを克服した
後に訪れる常態化では、オンライン化をどこまで残し、何をアナログに戻すかを吟味すること
になろう。「必要に応じてオンライン」は、「必要に応じてリアル」に変わるかもしれない。
いま我々は、仕事で扱うほとんどの情報がデジタル化されていて、チームの共有のデータ環境
やそれを利用するルールや方法(実行計画)を整理してその遂行に必要なツールやソフトウェ
アを扱えれば、大抵のことをオンラインで進められることをリアルに体験している。このよう
な体験にBIMを組み入れることへの企業の挑戦を期待している。関係者全員がBIMを修得し、
デジタルワーク中心のワークフローを実験することは、建設業界の未来を左右するチャレンジ
となる。