みんなが使えるBIMを目指し進化を続ける
BooT.one<応用技術>
2020.06.01
「みんなが使えるBIM」を目指す、Autodesk Revitのアドインパッケージ「BooT.one(ブー
ト.ワン)」。
スーパーゼネコンのBIM規格のノウハウが惜しみなく注がれ、膨大な機能や充実したサポート
体制が用意されているため、建築設計者をはじめ、さまざまな建設従事者からBooT.oneを導
入することにより、Revitのユーザビリティを飛躍的に向上させることができると注目を集め
ている。
大成建設の在職中から同サービスを長年にわたり開発してきた応用技術の高取昭浩氏に、BIM
のメリットを最大限に活かすために必要な視点や開発の経緯、現在もアップデートを続ける
BooT.oneのこれからの展開についてお話を伺った。
BIM本来の意義と2D図面出力の表現に集中
膨大な数に及ぶコマンドやテンプレート、ファミリが用意されたAutodesk Revitのアドイン
パッケージ「BooT.one」は、2019年7月に応用技術よりリリースされ、SB C&Sが販売元と
なっている。開発の中心にいるのは、Revit の日本語版がリリースされた約15年前からRevit
を使用し、昨年まで大成建設のBIM推進部門で活動してきた高取昭浩氏である。
BooT.oneの開発は、高取氏が建築設計でBIMの推進を妨げる最大の要因が「2D図面の表現に
必要以上にこだわっていること」にあると分析したのがきっかけだ。「当時から設計のプロセ
スでは、モデリングした3次元のデータを2次元に出力して加筆することが多くありました。
これでは3次元で情報伝達できるBIM本来の良さに気づくことができません」と高取氏は指摘
する。高取氏は、3次元で情報伝達を一貫して行う製造業での3DCADによる設計を手本としな
がら、建築業界における3DやBIMの普及にあたってはやはり2D図面が鍵となっていることに
着目。「製造業で3DCADが普及したのは、3Dモデルを作ると2D図面の作成が楽にできたから
と製造業の方々から聞きました。建築でも、意匠設計者は綺麗な図面が容易にでき、自分の意
図が伝わるかに興味があります。ですから、正確にモデルをつくれば、意図したどおりの2D
図面が簡単にできることに注力しました」とBooT.oneの開発経緯を振り返る。
BIMでは、3Dモデルを製作してから所定の位置で切って見れば、例えば断面図が作成できる。
このときに「ルールとツールが欠かせなかった」と高取氏はいう。「ベテランのスタッフが2D
図面を出力してチェックするとき、見え掛かりの線の表示、線の太さに強弱を付けること、部
屋名や寸法を入れることなどに赤字を入れ始めると、3次元がうまく思い浮かばない経験の浅
いスタッフやオペレーターは曖昧な表現をするようになってしまいますので、2次元での加筆
を極力少なくするように検討しました」。高取氏はルールとして、図面の表現をRevit 寄りに
セッティングすることとした。プロパティ機能を設定し、部屋名や建具記号、見え掛かりの線
の表示などを、加筆するのではなくクリックの指定で行えるようにツールとガイドラインを用
意。BooT.oneではモデルをつくり込むというBIM設計の前提を守りつつ、Revitの機能を付加
し高めていくことで、実務者が納得のできる適切な2D図面表現を可能にしている。
BIM導入に必要な5つの要素を網羅し、教育担当者の負担も軽減
BooT.oneは、BIMの初心者からベテランまで、誰もがRevitを使えるように、便利コマンド、
テンプレート、ファミリ、ガイドライン、トレーニングビデオコンテンツとBIM導入に必要な
5つの要素が網羅されている。
提供データは、コマンドがおよそ100、テンプレート1,000、ファミリは3,000と膨大な数が
用意されているため、ユーザーは「Revitによって図面をより正確に描くことができるだけな
く、必要なときに必要なものを引き出せる」という。
また、BooT.oneのWebサイトではユーザーからリクエストを随時受け付けており、ユーザー
のリクエストに沿って機能追加やコンテンツの充実が図られ、常に進化していく点も大きな
特長だ。ユーザーの意見から実装された機能は、すでに10を超えるという。
そして、充実したヘルプとサポート体制もBooT.oneの特長の1つだ。操作では、ボタンをマウ
スオーバーすることで機能の簡潔な説明が表示され、さらにF1キーを押すとより詳細なヘルプ
が示される。また動画とテキストによるチュートリアルも用意。専用ページからPDFでテキス
トをダウンロードし、2020年5月時点で53項目を数える動画を合わせて見ることで、Revit初
心者であっても操作を習得できる。「動画は数分以内でまとめることを目指し、ネットが繋が
ればどこでも閲覧できるので、隙間時間も活用することができます」と高取氏。内容はモデリ
ング編、図面編、詳細編が用意されており、「基本的な素養があれば、2週間ほどでかなり使
いこなせるようになるはずです。また建築設計の実際に従った実践的な内容としているので、
BIM推進を行う企業での教育にも役立てることができ、教育担当者の負担を軽減することがで
きます」と強調する。
さらに、操作がわからなくなったときは、Webによるサポートのほか、ソフトに精通したオペ
レーターが対応する電話サポートも利用できる。このようにBooT.oneは、Revitのユーザビリ
ティを向上させるためのツール群が備わるとともに、常に機能も強化され、強力なサポート体
制も整えられているのである。
リリース後は設計事務所、ゼネコンなどで次々に導入が進み、すでに数百社で使用されている。
ユーザーの中でRevitを導入して10年経つある設計事務所からはBooT.oneにより「7割ほど工
数が減った」との声が寄せられたという。高取氏は「単純には測ることはできませんが、ユー
ザーによってはかなりの効果を実感されているようです」と反響の手応えを語る。
設備版、仮設計画版など、さらに広がるラインナップ
現時点では意匠設計や構造などの拡充が進むBooT.oneであるが、設備や仮設の設計にも活用
できるパッケージを準備しており、近日中にリリースされる予定だ。
設備配管などの設計で活用できる「BooT.one MEP」では、やはりファミリを膨大に用意。設
備設計では素早く目的に応じたパーツを見つけることが重要になる、と高取氏はみる。「Revit
はシステムを制御しなければコマンドをつくりにくいのですが、例えばチャンバーでダクトを
接続するときには形状やサイズを指定すると、バックグラウンドでオーダーに沿ったファミリ
を集めてくるのですぐに配置することができます」と高取氏は説明する。
分類はユーザーが設定することができ、膨大なファミリからは、キーワードを入力することで
素早く絞り込み、メーカーが用意する製品にたどり着くことができる。なお、テンプレートは
Revit User Group(以下、RUG)の“MEP分科会”の仕様に準拠する。
そのほか、梁とダクトとの干渉チェックも、モデルだけでなく平面図上でも干渉箇所を赤く表
示させることでリアルタイムに行える機能も実装する。「図面が楽にできるようになっている
だけでなく、これらの機能によって多くの設備設計者にもBIMが良さそう、面白そうと感じて
もらえるはずです」と高取氏は期待を寄せる。「BooT.one MEP」はベータ版を5月末にリリー
スし、7月からトレーニングを開始。空調、給排水に続けて、RUGとも協調しながら電気も実
装し、アップデートは随時行っていく予定だという。
同様に5月末にベータ版をリリースしたのは、「BooT.one 仮設」である。必要な足場を全体で
押さえた上、足場の構造を解析し、数量を出して搬出までを一気通貫で検討できることが特徴
だ。この仮設用パッケージでも、ファミリのルールや設定は「BooT.one」と同様の考えで、
引き出すことが容易にできる。クレーンで鉄骨部材を吊り、構造体に干渉せずに回転移動でき
るかという機能も実装する。
多くの要望が寄せられている「BooT.one」の英語版も、チュートリアルやサポート、ヘルプの
翻訳も含めて現在急ピッチで進められている。「今後もさまざまな意見を反映しながら、ユー
ザーがさらに使いやすい形に進化させていきたい」と高取氏は意気込みを語った。
「BooT.one」についての資料のご請求やお問い合わせは、こちらのWebサイトで。