リリースから2周年を迎えたBooT.oneが導く
さらなるBIMの活用と展開<応用技術>
2021.10.13
Autodesk Revitのアドインパッケージ「BooT.one(ブート.ワン)」は、本年の7月にリリー
スから2周年を迎えた。「みんなが使えるBIM」を目指して開発された同ソリューションは、
すでに昨年の段階で意匠版や構造・躯体版などの拡充が完了しており、大和ハウス工業との協
業も実施。さらに現在、設備部分の機能であるBooT.one MEPにおいて、M・E・Pに関する機
能をそれぞれ順次追加している段階を迎え、さらに進化を遂げようとしている。
既存のユーザーからも好評だという同ソリューションについて、その理由や2周年を迎えた現
在の状況、今後のロードマップについて、大成建設の在職中から同ソリューションを長年にわ
たり開発してきた応用技術の高取昭浩氏にお話を伺った。
■みんなが使えるBIMを目指すBooT.oneのロードマップ
BooT.oneは、 “みんなが使えるBIMを目指す”というコンセプトに基いて開発されたソリュー
ションである。 BooT.one を使うことにより、正確にRevitで3Dモデルを作成でき、さらに意
図したとおりの2D図面が簡単にできる点が特長だ。モデルを作り込むというBIM設計の前提
を守りつつ、Revitの機能を付加し高めていくことで、実務者が納得のできる適切な2D図面表
現の実現とBIM本来の概念であるデータの活用も繋げられる。
BooT.one は、2019年に応用技術よりリリースされ、SB C&Sが販売元となっている。リリー
スから2年経ったが、それまでの間に数々のアップデートを実施。英語版や仮設版、断面リス
ト対応版など、着実に新しい機能をリリースしてユーザーの期待に応えている。
同ソリューションの開発の中心にいる高取昭浩氏は、「ここ1年は、ユーザーさんの意見を元
に、機能の追加や改善を行ってきました。大和ハウス工業様と協業も行いまして、そこで得た
フィードバックも新機能として増強を図っていこうとしています」と説明する。
また、「BooT.one MEP」に関しては、各分野それぞれを充実させるべく追加を行っており、
M、P、Eの順番で実装を行ってきました。
今年のはじめにPの部分である衛生設備機能をリリースしました。現在、電気設備機能の追
加を行っていて、順次機能を追加していく予定です。」と高取氏。
電気設備機能の追加に関しては、9月に電灯・コンセントのファミリがリリースし、弱電系、
幹線系を年末にかけて増強し、本年中に電気図面を一通り作成できる状況にしたいという。
「BooT.oneは、これで意匠・構造・設備・施工の機能がほぼ揃います。そのあとは、斜線制
限やALVSなどといった法規系に対応していく予定です。そして、BIM本来の目的であるデー
タをどのように活用していくかということが、来年度の大きな目標になるのではないかと思い
ます」と高取氏はさらなる進化を目指す。
■BooT.oneが多くのユーザーから支持される理由とメリット
このように意欲的な機能追加を行ってきたBooT.oneだが、ユーザーの増加も順調だ。すでに
2回目の更新を継続した既存ユーザーも多く、導入した企業からの満足度は高いという。その
理由はいくつかあるが、まずBooT.oneで提供しているファミリや使い勝手などが重要な要素
の1つだという。
「ファミリは、RUG(Revit User Group)と連携しながら、基本的には誰もが同じような環
境で使えるよう、協調して汎用性を重視しながら作成しています。例えば鉄筋の機能をリリー
スしていますが、BooT.oneでは単に鉄筋情報を入れるのではなく、 Revitのパラメーターの
値を指定して取得する作りにしています。こうすることでRUGの仕様に従ってRevitのパラ
メーターを活用でき、BIMの利点を広げられるのです」と高取氏。BooT.oneの手順に沿うこ
とで、百手かかっていたものが三手でできるイメージで、短い工数でルールに沿ったBIMモデ
ル作成が可能になるという。
また、BooT.one では、新しい機能のリリースに合わせて、必ずチュートリアルを付けている
のもユーザーから評価される点だと語る。
「チュートリアルで教育の手間も省けますし、動画でユーザー自ら学ぶことができます。また、
我々としても作成過程で気づきや発見があって一石二鳥です」。チュートリアルの作成時に
改善点などが見つかれば、プログラムを修正し、より使いやすように手直しするという。そし
て「MEPについては、日本語の資料が少ないため、その点も意識しています。Revit本体の解
説も入れ込んでおり、より気軽にMEPを使用する人が増えれば」と語る。
さらに、Webサイトではユーザーからリクエストを随時受け付け、リクエストを機能の追加
などに反映している。「毎週金曜日に、開発担当とヘルプデスク、ファミリ整備係などの関係
者全員で会議を行っています。ユーザーの意見を一個一個仕分けしていき、次に何を優先して
新機能にするか検討するのです」。ユーザーの意見を取り入れる手段は、そのほかにヘルプデ
スクへの電話問い合わせも含まれるという。「ここからも週に5~6件はリクエストが上がっ
てきますが、もう少し多くても良いですし、意見をいただくことはありがたいです」。また、
ヘルプデスクは BooT.oneのことだけでなく、Revitの基本機能などについてなども質問でき
るため、これも評価されていると高取氏は話す。
そのほか、 高取氏自らが講師を務める「火曜日の気ままにBooT.one」という定期ウェビナー
も人気で、すでに43回も開催。
YouTubeのto BIMチャンネルにもアーカイブを残し誰でも学べるように工夫した。このよう
に、カスタマーサクセスを重視しながら新機能の開発とアフターフォローにも力を入れている。
■初期段階での検討に使用できるクラウドサービスなど今後の展開
また、Forge を使った新しいクラウドサービス「ConnecT.one Sketch」も高取氏は薦める。
「これはWebブラウザを使用する、いわゆるWeb CADです。意匠設計者が初期段階で敷地を
設定し、ゾーニングなどを検討できるツールです。色分けしたブロックを置いていき、常に面
積が画面表示されるため、設計者は容積率を何パーセント使用中かを把握しながら検討できま
す。そしてWeb上にアップロードするとRevitのモデルが自動でダウンロードできるようにな
ります」と高取氏。BooT.one は、テンプレートで成り立っているため、これは設計者が面積
などを検討する際に使用し、ここから仕上げ表や建具表を作るという流れに活用できるという。
また、「Webブラウザ上で使用するため、タブレットなどでも使用が可能です。今後は機能の
追加などに力を入れていきたいです」と語り、新たな展開が生まれそうだ。現在はトライアル
という形だが、11月中旬頃に正式リリースを予定しているという。
そして高取氏は「本格的なデータ活用時代が間もなくやってきます。いままでのような2次元
図面中心ではなく、今後はデータの活用をぜひ考えていただきたい。東南アジアでも日本より
進んでいる国が出てきており、このままでは日本は遅れてしまう恐れがあり、まずは2次元図
面の変換の手間をBooT.oneで省き、次のステップに進んでもらいたいです」とBIM本来の活
用の重要さを語る。
そのほかに、SB C&Sが1社協賛し、応用技術、トランスコスモス、オートデスクが共催する
「Insight & Solution セミナー2021」を10月27日(水)に開催するという。同セミナーは、
DXに興味のある建築、土木、製造業界の顧客を対象にしており、 to BIM、to CIM、to DMG
の3つのカテゴリーに分けてそれぞれセッションを行う。高取氏の講演をはじめ、基調講演や
各セッションで構成されている。
SB C&Sが1社協賛する上記の催しの詳細は、こちらのWebサイトで。