ユニット建築の価値を高めるBIM
2022.01.20
パラメトリック・ボイス 安井建築設計事務所 村松弘治
環境負荷低減社会への流れの中で、近ごろ〈歴史的建造物〉の再生や〈ユニット建築〉に携わ
る機会が増えてきている。旧い建築はそのアーカイブと状態把握が重要であるため、3Dス
キャンや以前に紹介したパノラマmemoを活用し、短時間かつ確実に現状把握や業務の効率化
を行うことができている。一方、〈ユニット建築〉はリユース、リサイクルを踏まえた部材・
部品の将来的活用や展開がポイントになるのだが、BIMは在来工法とユニットとの組み合わせ
を合理的に解きつつも、部材・部品を建築時やその後の転用も踏まえて〈確実に管理〉するた
めにとても効果的で重宝している。
またクライアント側から見ると、建築の維持保全やリサイクル建築はSDGs経営、ESG投資に
結びつくという点から、デジタルツールそのものへの関心とともに、その活用による合理的な
進め方と〈成果〉にも注目が集まっている。〈成果〉とはカーボンニュートラル・ゼロエミッ
ションを含む地球温暖化ガスの低減である。
このように建築における維持保全や展開手法の増加は、過去・現在・未来を通して価値あるモ
ノを〈つなげる〉ことを意味し、それらを〈確実に管理〉するためのBIM/デジタル化は今や
標準仕様になってきている。
このイメージを包含した一つの提案を紹介する。
マロニエBIM設計コンペティション2021の最優秀賞「―Link Unit―」である。同コンペは、
(一社)日本建築士事務所協会連合会が主催するコンペで、当社社員による作品の
「―Link Unit―」が昨年の最優秀賞となった。「―Link Unit―」は、ユニット建築の可能性と
ともにBIMをまちづくりに活用する手法を示している。同時に都市OSを介した〈まち・建築・
人〉のつながりを明快に解いている。さらに環境材料とリサイクル性能による環境負荷低減、
無数の組み合わせによる多様なユニット空間、そしてこれらを自由に構成できるBIMファミリ
を設定することでユニット建築の多様性と可能性の広がりを想起させる。
また〈人の感性の情報化〉提案は、快適性や環境を可視化するBIM活用の可能性にも期待が膨
らむ。将来、人的センサーの組み合わせによりWELL、健康空間づくりもより定量化できるだ
ろう。うまく活用できれば温室効果ガスを削減しながら合理的に快適な人の環境づくりを検討
するプロセスとフィールドも広がると思う。さらに〈オープンネットワーク〉は、まち・建築・
人をつなげ〈より住みやすいまちづくり〉の基盤にもつながる。まさにBIMを基盤とした都市
OS・建築OSのイメージである。
歴史的建造物の再生やユニット建築へのBIM活用を通して、新たな建築の価値と社会づくりへ
の展開が見えてきたように思う。