鉄骨工事における施工調整
2022.02.22
パラメトリック・ボイス 隈研吾建築都市設計事務所 名城俊樹
去る2022年2月2日、南三陸町道の駅の上棟式が挙行された。コロナ禍によって工事が思うよ
うに進捗しなかったことや、鋼材の取得に手間取ったことで、当初予定していたよりも4ヶ月
以上遅れての開催であった。
この道の駅は、震災復興祈念公園、中橋に続く、震災の記憶を語り継ぎ復興の象徴となる施設
であり、我々がグランドデザインを行った志津川地区において最後に建設される大型の公共施
設である。施設の特性を考慮した結果、敷地に隣接した南三陸さんさん商店街、中橋、対岸の
旧防災対策庁舎等との関係性や、八幡川に近接した敷地条件を活かすように建物を配置し、平
面計画を作成したことから、XY方向の構造軸が直行しない箇所が多く発生した。また壁、屋根
も勾配を持っていることから、鉄骨各所の取り合いは極めて複雑なものとなった。この構造の
複雑性を考慮し、3Dによる各所の確認を可能にすることを入札条件に入れたことから、鉄骨
ファブと積極的にデータのやり取りを行いながら製作図を詰めていった。
鉄骨ファブ側はAutoCADをベースとして開発された専門アプリケーションを使用し、我々は
Rhinocerosを使用していたが、dwg形式のファイルを介すことでスムーズなやり取りが出来た。
コロナの影響で対面での打ち合わせ回数が限定されたが、オンラインミーティングで画面を共
有しながら作業を行うことで、それぞれがリアルタイムに3Dモデルを修正することが可能と
なり、むしろ作業効率が上がった側面があったことが想定外の収穫だった。
また、工場検査の際には様々な形状の鉄骨を検査したが、3Dで各部材の形状を把握できていた
ことで、ブラケット形状や角度の検査をスムーズに行うことが出来た。建方においても、かな
りイレギュラーな角度で取り合っている鉄骨同士の接合時において、3D上で事前に十分な検証
を行うことが出来ていたことで、大きな問題なく進めることが出来た。これだけ複雑な形状の
鉄骨の建方において、ボルトの差し込み方向までしっかりと調整できたことは、施工上のメ
リットだけではなく、意匠上も大きなメリットがあった。
今後、BIMがより小規模の現場レベルまで浸透していくことで、上記のように設計者と施工者
とのやり取りがよりシームレスに行われていくことを予感させる鉄骨工事であった。
尚、施設のオープンは今年の秋を予定している。