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コラム

BIM周りの仕事は楽しいですか?

2022.08.18

パラメトリック・ボイス                   GEL 石津優子

7月21日(木)~7月22日(金)の2日間で鳥取大学のツナガルドボクの学生さんと、広島工
業大学の杉田研究室の学生さんに向けて、「プログラミングを用いたBIM周りの仕事」という
題目で自分の仕事をプレゼンする機会を頂きました。

BIM周りの仕事をする人として、起業した人として、子育て世代の親として、仕事と生活につ
いて話をしてほしいという依頼でした。

実はプレゼン内容の事前打ち合わせをした際、予定していたプレゼン資料を見せると反応は、
「内容が専門的で難しく理解できなかったので、全くBIMを知らない人、建築もあまり知らな
い人に向けて、もっと簡単に説明してほしい。特にBIMをデータを通して何ができるかという
イメージを掴みたく、「面白さ、楽しさ」を伝えてほしい。どういう経緯でこういう仕事をし
ているのかなど、もっとキャリアについて知りたい」という素直で正直な意見を頂きました。
「参加者には大学1年生もいる場合があり、何がしたいかまだ見つけていない人もいる、その
人たちにこの仕事の魅力を教えて欲しい」と要望がありました。

何を職業にしているのか親にすら上手に言語化して説明できておらず、過去の仕事の内容説明
することは今までもプレゼンしていましたが、魅力的に伝えるという方向性で話をしていな
かったと気づきました。

ここ2年は、締め切りに追われながらパソコンに向かい、髪や服装を振り乱し、さらにコロナ
禍で保育園が不定期に閉鎖したりで、計画通りにいかないもどかしさや悔しさを日々感じてい
ます。健康管理と衛生面にもこれまで以上に向き合う必要があり、日々の仕事に「面白さ、楽
しさを振り返る」というアプローチを怠っていました。

また、BIMを知らない、建築も知らない層に対して話をするというのが初めてだったので内容
を考えました。

まずは、仕事の説明からです。大学一年生、つまり高校生の自分にもし今の仕事を分かるよう
に伝えるとしたらと考えました。

・土木の仕事:くらしに必要なインフラをつくる
   トンネル、橋、道路、ダムなど、場所と場所を繋ぐものをつくる、生活をつくる

・建築の仕事:くらす空間と滞在する場所をつくる
   家、学校、図書館などで、過ごし方をつくる、心地よさをつくる

・AECテックの仕事(私の仕事): 建設業で働く人の環境をテクノロジーでつくる
   BIM、CAD、ツール開発、ウェブ開発など、情報と情報を繋ぐものをつくる、
   働きやすさをつくる


このように説明しました。よくBIMは必要か、AECテックの仕事は必要かという話になります
が、このように並べると分かりやすく理解ができました。現在はインフラが整い、時を過ごす
空間が豊かになりました。未来に向けては、さらに生きがいを感じる仕事や意義があることに
時間を費やすため、また平等で健全な働く環境を整えるために、テクノロジーを使って効率化
や情報伝達の高度化を図ることでより良い働く時間をみんなでつくりましょう。そういうこと
を仕事にしていると整理することができました。

つぎに、BIMについてです。

情報やデータ活用というと難しく感じますが、大学生の皆さんは普段iPadやiPhoneで何かしら
のアプリを使っています。タスク管理だったり、買い物だったり、映画のレビューだったり、
チャットだったりというアプリです。それは全てデータベースを活用しています。そのような
身近な話から始めました。そして、普段の生活で他者と接する際に、例えば運動好きの人たち
でフットサルをしよう、○○さんは映画好きだからこの話をしよう、○○さんはこれが得意だ
からこれを頼もうとか、そういう情報を使います。人の属性や特徴を理解して、アクションを
考えます。その思考とBIMの思考はよく似ていてデータを活用してBIMデータをつくるという
のは、カテゴライズとタイプに分けて、パラメータを設定することだという話をしました。
それがBIMデータになると、鉄筋径が同じものの鉄筋の数量を測ったり、家具の個数と種類を
集計したり、ある条件下の要素を取り出したりということになります。

ハンズオンとしては、実際にRevitのファミリをつくり、そこにインスタンスパラメータとタ
イプパラメータを追加し、挙動がどのように違うかを勉強し、あるカテゴリだけをDynamoで
取り出すデモを一緒に手を動かして体験しました。

45分のデモでしたが、データベースについてBIMについて2DCADと比較しての有用性を知る
ことができたという感想がきました。

最後に、面白さや楽しさについてです。

プログラミングを用いたBIM周りの仕事をしていますが、飽きることなく毎日発見があります。
プログラムを書く技術に対してもそうですし、CGやジオメトリの知識、建築や土木といった建
設周りの技術についても、プロジェクトごとに学びがあります。直接的に建築を作ったり建造
物をつくるわけではないですが、システム化の仕事を通して、IT技術、CG、建設技術と3つ同
時に触れることができるところが楽しいと感じています。プログラミングに関しては、始める
のはパソコンさえあれば独学で始めることができますし、最初はできなくても時間をかければ
ある程度まで成長できるため、バックグラウンドがない人でも地道にできるところが大変素敵
なスキルだと魅力を感じています。起業をするといっても、人生が人それぞれなのと同様に起
業の仕方もそれぞれで誰を参考にしなくても、今の自分に合った働き方と満足できる生活がで
きることが一番だと思います。自分にとっては、好奇心を満たしてくれ、人や社会との接点で
あるこの仕事は、大変楽しく、できる限り長く続けたいと思う仕事です。誰かにとっては違う
かもしれないけど、自分にとっては大切だと思える仕事が見つかったことは本当にありがたい
ことだと学生の皆さんと話をして再認識しました。


石津 優子 氏

GEL 代表取締役