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コラム

ようこそ、髙木秀太事務所へ(前編)

2023.09.26

パラメトリック・ボイス              髙木秀太事務所 髙木秀太


こんにちは。髙木秀太です。連載第三回です。今回は私が代表を務める髙木秀太事務所につい
てご紹介をします。コロナの時代を経てフルリモートワークを採用するに至った髙木事務所で
すが、そこに限らず働き方に関してはちょっと「独特」と評される事が多いです。私自身がご
紹介すべきなのですが、事務所のスタッフに語ってもらったところ大盛り上がりして。。。も
ういっそのことスタッフに紹介してもらっちゃいました。事務所の良いところだけじゃなく弱
点や、私へのダメ出しまで出てくるみたいですよ!現代を生きる建築とデジタルの設計事務所
「髙木秀太事務所」とはどんな会社なんでしょう。それではどうぞ!
 


髙木事務所への入社
 
まずは、髙木秀太事務所への入社のきっかけや入社前後のそれぞれのイメージについて話しま
した。
 
田野口 貴成(以下、田野口):僕の入社のきっかけはアルバイトで、その後新卒で入社しまし
た。会社の規模がアトリエ事務所に近いので長時間労働が当然かと想像していましたが、実際
は自分たちで仕事量もコントロールできる環境で、フルリモート・フルフレックスの働き方に
も自分はマッチしました。
 
布井 翔一郎(以下、布井):入社後はどんな役割を担っていますか?
 
田野口:学生時代はRhinoceros / Grasshopperをベースに建築設計のプログラミングをやっ
    ていましたが、入社後もそれらの開発を担当したりしています。加えて、最近は入社
    後に勉強を始めたWeb関連の仕事も増えてきました。
 
布井:僕は、大学一年目の授業で髙木さんと出会いました。実は、講義する髙木さんは少し怖
   いセンセイという第一印象だったのですが、講評の時に学生の話を真剣に聞いてコメン
   トしてくださったのを覚えています。いわゆる建築家らしさとは別の髙木さんなりの主
   義主張の軸があって、話を聞いていて心地良かった印象があります。
 
田野口:言葉に軸がある人の元で働きたいと思いますよね。逆に、その日の気分や機嫌で言う
    ことが変わるボスの元では働きたくないと思ってしまう。
 
布井:その後、髙木さんの授業でデジタルの分野に興味が沸き、授業後にお話ししたのがきっ
   かけでアルバイトに採用されました。当時は、髙木さんと自分含め社員は3名だったの
   で、師匠に付く弟子のような気持ちでした。そして、卒業後そのまま新卒で入社しまし
   た。ルナさんはどうですか?
 
田野口:僕と布井さんは新卒組で、ルナさんは転職組なので、違いがありそうですね。
 
竹内 瑠奈(以下、ルナ):新卒で雑誌や書籍等のグラフィックを中心としたデザイン事務所
に入社しましたが、今後のことを考え始めた頃「デザイナーとして髙木事務所に入社しないか」
と誘ってくださいました。髙木さんが「ルナさんのデザインを信頼しているし、僕とルナさん
が良ければそれでいいんだよ、僕の会社だから」と言い切ってくださり、それがすごく響いた
し、信頼されていると感じてとても嬉しかったです。
 
布井:髙木さんからの直々のオファーですね。
 
ルナ:働き方の面でも、髙木事務所はフルフレックス制なので、自分の時間を自由に取れるこ
   ともとても魅力的に映りました。私自身建築やインテリアなどにも興味があったので、
   髙木秀太事務所では空間作りにも関わる仕事ができそうだなと思い入社を決めました。
   入社後すぐに書籍(髙木秀太事務所白書)制作を担当することも決まっていたので、前
   職で培ったデザインスキルも生かせると思いました。
 


プログラマーとデザイナーの共闘
 
布井と田野口はプログラマー、竹内はデザイナーとしてそれぞれ髙木事務所に籍を置きます。
それぞれの立場で協働することで、刺激的な場になっています。
 
布井:デザイナーであるルナさんは、プログラマーである僕らと一緒に仕事をするのはどうで
   すか?例えば、プログラムの仕様書や教材をデザイン・編集することもありますね。
 
ルナ:基本的に大きな問題はありませんが、プログラマーの要望や要件は論理的な部分が多く、
   省略されたニュアンスでの表現を避けることに戸惑うこともあります。やはりプログラ
   マーは数値を扱っている分厳密だし、少し堅い、というか。
 
布井:受け取り方や表現にも美学の違いがそれぞれありますね。
 
ルナ:基本的なデザインの方向性は私に任せて頂けるし、私が作るものの方向性に共感してく
   ださっているから、一緒にお仕事できていると思います。
 
布井:そういう意味で、違うジャンルのスタッフが社内にいることは、いい効果を生んでいま
   すね。大きな価値観の違いはないですし。
 
ルナ:私も非常に勉強になります。異なる職種の方とのデザインのコミュニケーションの取り
   方、ここは曖昧な表現ではなくしっかり言葉にするべきなんだな、とかですね。
 

髙木秀太事務所の働き方「フルリモート、フルフレックスタイム、週休日数・曜日選択制」
 
髙木秀太事務所の働き方には、①フルリモート、②フルフレックスタイム、③週休日数と曜日
を自由に選択できる、という特徴があります。3人それぞれの働き方について話しました。
 
ルナ:フルフレックスなので勤務時間は本当に自由ですよね、外部とのミーティングの時間さ
   え外さなければ自身の他の都合も合わせていける。
 
布井:僕は毎週水曜と木曜の二日を週休として選択しています。意外と平日を休みにしていて
   も問題なく働けるし、コミュニケーションにも難はないです。ルナさんは決まった曜日
   を休日にするのでなく、流動的に休みを取ってますよね。仕事に差し支えないですか?
 
ルナ:私は副業での出張などで、平日に髙木事務所の仕事を休まなければならないこともあり
   ます。そんなときは(本来休みの)土日で髙木事務所の業務を行い、その分代休で副業に
   対応したりします。
 
田野口:平日の日中に副業のクライアントと打ち合わせして、代わりに髙木事務所の業務の終
    業時刻を遅くするということもありますね。
 
ルナ:それから、私たち3人は週5勤務の社員ですが、そこも調整可能なんですよね。仮に自分
   の副業が忙しくなりすぎたら週4や週3の勤務を選択出来る、というのも良いシステムだ
   なと思います。
 
田野口:逆にこれだけ自由で、みなさんさぼったりしませんか?
 
布井:僕は昼寝することもあります。でも、その分ちょっと夜遅くまで仕事したり。髙木事務
   所は「1日8時間勤務」という建前上の労働規則が一応はありますが、髙木さんにとって
   はあまり重要ではないのだと思います。この日までにこの量を終わらせてくれるだろう、
   という期待を込めて仕事を割り振ってくれていると思います。それさえ出来ていれば良
   いんじゃないかな。
 
田野口:それでいうと、割り振られる仕事の分量は丁度良いと思っています。多少残業する時
    もありますが、大体は時間内で終わる量で、仕事の振り方にも学ぶところがあります。
    髙木さん自身もプログラマーというかプレイヤーなので、やはりどのくらい時間かか
    るかを髙木さん自身がわかっているのだろうと思います。代表が経営のみに特化した
    タイプか、プレイヤーでもあるのかで、働きやすさは大きく変わってくると思います。
 
布井:髙木事務所はワーケーション(=旅行しながら仕事をすること)も推奨されていますね。
 
ルナ:私は副業で受けている展示会の関係で、春夏・秋冬のシーズンで2週間ずつ、欧州出張
   に行かせてもらっています。出張先での仕事の都合や時差を考慮して、髙木事務所の仕
   事は若干セーブしますが、できる分量をタイミングを見てキリの良い所までこなします。
   時差の関係で現地時間で真夜中、日本時間で早朝にミーティングなどということは当然
   発生しますが、今のところはこの方法で成り立っています。
 
布井:ルナさんは副業と結びつけていますが、単純なレジャーと組み合わせるスタッフがほと
   んどです。僕も1週間程、ワーケーションの経験があります。他にも経験者が2人ほどい
   ますね。1ヶ月欧州旅行しながら働いたスタッフもいました。有給・代休などの制度も組
   み合わせると、これからもワーケーション制度はうまく機能しそうです。
 


髙木秀太事務所の働き方「フルリモートでのコミュニケーション」
 
髙木秀太事務所はフルリモート勤務で、主にSlackとZoomを使って仕事のコミュニケーション
をとっています。
 
布井:フルリモートでの仕事にあたって困ることはないですか?対面と遠隔のそれぞれの優位
   性や、紙媒体とデータ媒体の扱いの差に関わることなど。
 
田野口:対面の方が円滑なケースはあると思いますが、自分の業務では問題ないですね。紙資
    料が必須な場面もほぼないですね。 総じて今のところ僕は不都合を感じていません。
 
ルナ:私は逆にありました。特に書籍の仕事は最終成果物がデータではなくプロダクトなので、
   実物を見ないと進められない部分が沢山あり、事務所内外問わず対面での業務もかなり
   多くなりました。
 
田野口:オンラインでのコミュニケーションの面ではどうですか?
 
ルナ:例えば、基本的にZoomやSlackだとあまり無駄話はしませんよね。なので偶発的な何か
   や会話が生まれたりということがちょっと少ない。無駄がなくていい面もありますが、
   一方でそういった社内のコミュニケーションをもっと増やしたいと思うことはあります。
 
布井:効率化と創造性は相反する部分が多いですよね。オンラインでのコミュニケーションの
   件でもう1点、Slackなどテキストでの感情の伝え方についてです。例えば、髙木さんか
   らの指示など簡潔すぎて「どういう表情や気持ちで言っているのかな、」と思う時があ
   りませんか?会話などで関係が築けていないと、やはり感情は伝わりにくいと思います。
 
田野口:僕は割り切ってますけどね。仕事のやり取りで文章のみでは感情が伝わらないのは当
    然ですし、仕方がないので。
 
布井:同僚との関係性、会社の雰囲気、 社内交流などのリアルなコミュニケーションはどうで
   すか。もう少し会社全体で集まる日が増えた方が良いかな、と個人的には思います。
 
ルナ:一般的な会社でよくあるようなお昼休みや仕事の帰りに一緒に食事に行く、などという
   ことは髙木事務所ではゼロですからね。例えばそれをたまにはわざと生み出してもいい
   のかも?以前何度か、社員皆で展示会を観に行ったことはありましたね。すごく良かっ
   たと思っています。やはり共通の経験からしか生まれない価値観もあると思うので、
   チームとして自分や 皆さんが何を見てどう感じるか、共有したいですね。それは今後、
   この事務所がクリエイティブなことを目指すなら必要なことだと思います。
 
田野口:この視点が出てくるのも、やはりデザイナーだからなんだろうなと思います。
 
布井:SlackやZoomではなかなかそういう話になりませんからね。フルリモートであるデメ
   リットの1つかもしれない。仲間の価値観をわかっていることは、仕事上で特に大事で
   すよね。
 


再び髙木です。以上の様に前編はフルリモート・フルフレックスなど、働き方のスタイルにつ
いての話が中心でした。常日頃、私はスタッフに「こういうスタイルにしてるのだから、積極
的にサボれ。」と、話をします。だって私たちの専門としているコンピューターは「ヒトが楽
するための機械」なんですから。若いスタッフほど放っておいたほうがオモシロイことをする
ので、このサボりの余白をなるべく多く確保するのが私の仕事かな、とも思います。
この特集は次回まで続きます。後編では、推奨されている副業に関する詳細や、事務所として
の今後への展望が語られるそうです。また2ヶ月後の後編でお会いしましょう!



 

髙木 秀太 氏

髙木秀太事務所 代表