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コラム

続・意構設間データ連携の実現に向けて

2024.02.22

パラメトリック・ボイス                  日本設計 吉原和正

BIMプロジェクトの支援やマネージメントを行っていると、BIM活用以前のそもそもの設計の
進め方が原因で停滞してしまうことが度々起こってしまいます。今のタイミングでBIMを活用
して進めれば効果的なのにと言ってはみるものの、なかなか理想的なプロセスで活用されず、
もどかしい日々を過ごしていたりします。
 
確かに、これまでの、変更に伴う修正作業に幾度も見舞われた経験の反動からか、設計最終盤
にプランが確定してから本格的に取り組むやり方に慣れ親しんでしまっているのも無理はない
気がします。自分自身もその苦労を身に染みるぐらい味わって来た側の人間でもありますし。
 
ただ、このような、いわゆる締切合わせの業務プロセスのままだと、様々な課題が後工程に積
み残されてしまい、現場に乗り込んでから擦り合わせする羽目に陥ってしまいがちです。今ま
での設計の進め方で今後もどうにかなれば良いですが、施工段階の人手不足が叫ばれる中、放
置したままにはできないはずです。
 
かと言って、もの決めのプロセスを無視して、無邪気にフロントローディングしてBIMモデル
を先走って作り過ぎてしまうと、その後の手戻りでその分の作業が無駄になってしまい、本末
転倒だったりします。
 
肝心なのは、設計プロセスの中で、情報粒度や確定度に合わせて、適切なタイミングでBIMを
絡めた検討を行い、徐々に深度化を図っていく進め方。
「As Is」の業務プロセスのままでBIMだけ持ち込んでしまうと、BIM化が目的化してしまい、
疲弊してしまい兼ねません。
BIMを効率的に活用するには、「To Be」の業務プロセスへの移行の上で進めていくことが肝
心です。
 
「段取り八分、仕事二分」という格言がありますが、特にBIMは段取りが命。
 
以前のコラム「「部屋」さえあれば、設備もBIMを有効活用できる ~設備設計を合理的に行
うための基本設計からのBIM活用~
」で、設備も設計序盤、基本設計からのBIM活用を進めて
いくべきという話をしましたが、ポイントになる意匠BIMモデルの「部屋」に関しても、変更
を恐れて全てが確定するまで待っていたら、検討すべきタイミングを逸して課題を先送りしか
ねません。
意匠・構造と設備が同時進行で徐々に深度化していく、「To Be」の業務プロセスをBIMで効
率的に進めていくためにも、ある程度の確定度と情報粒度の中で、徐々に布石を打ちながら設
計を進めていく習慣をつけていくことがBIM活用を成功に導く要ではないかと思っています。
 
このように、意匠・構造・設備の分野間連携をBIMで効率的に行うには、さまざまな意識合わ
せが必要で、今までの個人やチームの個別の設計のやり方を脱して、全社で統一したプロセス
に移行することは並大抵のことでは実現し得ません。
ましてや、立場や育ってきた環境・文化が異なる様々な会社の垣根を越えて、一般化すること
は不可能と言わざるを得ません。このような分野間まで踏み込んだ取り組みは、実際のところ
は各社で進めるしかないのではないかと感じているところです。
 
ですが、特に設備にとっては意匠や構造のBIMモデルの在り方が大きくBIM活用方法を左右し
てしまうのも事実ですし、意匠や構造にとっても設備のBIMが無いと片手落ちだったりします
ので、無理は重々承知の上で、ユーザー会であるJapan Revit User Groupにて、Revitによる
分野間で連携したデータフローの検討を行っております。当然、網羅的に分野間のデータ連携
のあり方を整理・検討するのは不可能なので、誰しもが真っ先にぶつかるであろうテーマに限
定して、具体化に重点を置いて検討を行なっています。
 
そして先日の2/13にはRUG参加者以外の方も参加可能な「RUG Conference 2024」とい
うイベントを開催(100名程度の方が現地参加)し、抱き合わせで開催したRUG NIGHT+にて
「部屋やスペスの情報連携について部屋情報をもとにしたDynamo活用事例」という分野
間連携をテーマにRUGのメンバーから具体的な取り組み内容を発信しデスカッシンさせ
てもらいました。
 
日本のRUGは、世界的にも類まれな規模で活動しているらしく、意匠と構造と設備が一緒に
活動しているのも希少な存在のようです日本ならではのこのようなBIMの取り組みが何か
しらの形となって、国内のBIM普及を多少なりとも後押しできればと思っているところです。

吉原 和正 氏

日本設計 情報システムデザイン部 生産系マネジメントグループ長 兼 設計技術部 BIM支援グループ長