「デジブラ」と「カイロス」?
2024.04.04
ArchiFuture's Eye ARX建築研究所 松家 克
現在、日本にはロケット発射基地が全国に4カ所。過去に利用していた打上げ基地や実験所、
観測所を含めると関連施設は、ネット検索によると8カ所という。日本の重要な主基地の種子
島宇宙センターは、今年の2月17日に、観測衛星"だいち3号"を搭載した"H3"1号機の失敗経
験を踏まえた2号機が、緊張感の中で成功裏に打上げられた。数々の衛星や1月20日に"SLIM"
が月面着陸に成功した時のロケット"H-IIA"の後継機と位置付けされた“H3”は、日本の将来
を担っている重要な大型ロケット。今後は、年6回の打上げを目標としている。種子島宇宙セ
ンターは、内之浦宇宙空間観測所と併せ、JAXAの最新ロケット打上げの重要な基地として知
られている。只、昨年の日本の衛星打ち上げは0機、今年は、未だ1機。JAXAの次回の打上げの"H3"3号機は、"だいち4号"を搭載予定。3月22日の日経産業新聞によれば、日本の民間会
社のシンスペクティブが開発した4機目の小型衛星が、米国のロケットでニュージーランドの
基地から打上げられ、成功した。米国と中国は、昨年、50機程度を打上げたという。
日本には、ロケットの打上げ基地が少ない。現在、稼働中の民間の小型ロケット打上げ基地
は、北海道と串本だけだという。今後は、世界の小型衛星の需要が、爆発的に増えると想定さ
れている。本州の最南端である紀伊半島、和歌山の串本は、小生の生まれ故郷の南紀白浜温泉
に近い。関連法の整備に伴い、衛星を搭載する小型ロケットの開発からロケット打上げまでを
一貫して担う企業として、2018年7月に「スペースワン」が、数社の出資で発足。串本町の自
社運営のロケット打上げ基地「スペースポート紀伊」を構築し、固体ロケット開発と特性を活
かした高い即応性、低価格、高信頼性、機動性のある民間射場を強みとした小型衛星用の商業
宇宙輸送サービス事業を目指すという。今では多くの出資社と支援者であるキヤノン電子、
IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行、紀陽銀行、K4 Ventures、関西電力、
太陽工業、三菱UFJ銀行、アズマハウス、オークワなど地元企業も含まれ、年間で小型ロ
ケット30機の打上げを目標としている。民間では、米国のスペースXを含めて世界に数社あ
るが、昨年は米国212機の内、スペースXは108機で、民間の役割も大きくなっている。
紀伊半島は、熊野古道などの伝統的な名所や温泉地、観光地を持つが、スペースポート紀伊
は、この地域での民間のスタートアップ事業である。小型衛星を搭載した"カイロス"ロケット
打上げの瞬間を3月9日と13日、YouTube Liveで見守ったが、残念ながら延期と自律での爆発
に終わった。想定内のトラブルだと考えるが、この失敗データの分析を踏まえて、成功ステー
ジの今後を確信している。
日本列島は、北から南に極端に細長い。このためにロケット打上げ基地は、各地域の面前に広
大な太平洋が広がり、さらに南西方向にあるインドネシアを含めた東南アジアの島国や半島国
を超えた先の海には、大きなインド洋が控えている。このことは、落下時の安全性など、世界
に比較しても絶対的な優位性がある。今回のH3のロケットの2段目は地球を一周させた後にイ
ンド洋に着水させている。中国や北朝鮮が面する狭い海岸線を俯瞰すれば、その優位性は明白
である。因って、南北の連続打上げも可能だ。主基地が運用上の拠点のハブ機能を持ち、各基
地と連動可能な世界基地の一つになることを期待している。
中国は今年、100機以上の衛星を打上げる予定だという。米国は2月に民間ロケットで、月面
初着陸を成功させた。マイクロソフトのAI回答によれば、これまでに世界で約1.3万機の衛星
が打上げられているという。米国は約6,198機で全体の半数を占めている。ロシアは約3,620
機。中国は約781機。英国は486機。日本は、これまでに301機で世界の5番目。気象観測衛
星やGPS用の衛星、科学・観察衛星などが運用されている。
ロケットと衛星に関連する技術は、コンピュテーショナルな先端技術とセンサー技術の集積と
いえる。実験や生産、センサー、軌道計算。更に量子コンピュータの運用が軌道に乗れば、宇
宙と地球がもっと密接に感じられるのだろう。今や国だけでなく民間でもロケットを打上げる
時代。設計やエンジンの開発も進化している。あらゆる不確実な現象を解決するために用いら
れる「数値シミュレーション」という最新の設計技術があるが、これを支えているのが"HPC=
ハイパフォーマンスコンピューティング"だという。ロケット開発では、この手法無しでは実
現しないと言われるほどで、実際、日本でもJAXAが"はやぶさ"の大気圏再突入カプセルやロ
ケットは、数値シミュレーションで開発されたという。併せ、ロケットの打上げと衛星の運用
には、センサーが重要で今年の大谷の練習メニューと似ている。
話を変える。サッカーなどでのデジタル分析は以前のコラムで触れたが、人気が沸騰している
大谷翔平のトレーニング風景でもセンサーによるデータ収集と分析が話題になった。
一つ目は、「ブラスト」装置。極小センサーがセットされ、打撃の瞬間に13項目のデータが
一瞬で取れ、スイングや軌道、バットスピード、アッパースイング度合いが解るという。今ま
では"感"だったのが、数値で確認と学習が出きる画期的なデジタル思考であり対応といえる。
二つ目は、重さ約7グラム未満の精密機器「パルススロー」だ。肘の状態を見える化し、けが
の予防とパフォーマンス向上をサポート。パルスでは1球ごとに腕を振る速度やリリースの角
度が計測出来る。
三つ目は、ブラジャーらしきものを着用していた。これは「GPSパフォーマンストラッカー」
で、「デジタルブラジャー=デジブラ」とも呼ばれている。GPS機能を使い走行距離や最高速
度、心拍数、カロリーなど、アスリートにとって重要な数値指標をリアルタイムで計測出来る
最先端のトレーニング機器。データはスマホに直接送信され専用アプリで分析。以前のコラム
でも触れたが「デジブラ」は国際サッカー連盟も公認。メッシ選手も利用。各種データの取得
が可能。仮に選手がケガをした場合、それを分析することで負荷とケガの相関が見え、選手の
コンディションを適切に管理出来る。世界のアスリートが利用している。・・と、記していた
ら大谷の結婚のニュースが飛び込んできた。日本女性だという。アメリカ人でなくて、何故か
ホッとした。
四つ目は、スマートグラスによる練習中情報の字幕表示。
大谷は、デジタル機器とデータ分析を積極的に使い、試合では練習で鍛え上げられた運動能力
と資質、併せ、感での今年の大活躍を期待している。
最後に、大林組が、BIMモデリングルール「Smart BIM Standard」を一般公開。一方、白浜
のパンダでなく職人の手造り感満載の「ホテル川久」を訪れた建築仲間のFacebookでの呟き
が、何故か?続いている。生まれ故郷の白浜便りが嬉しい。・・と最後の入力を始めたら、今
度は韓国での大谷フィーバーの様子と新妻の真美子さんとの映像が飛び込んできた。今年の
フィーバー度は凄い! ・・とコラムを書き終えた。その後に元通訳の違法賭博の報道があり
大変驚いた。ゲームには通常通り出場しているが、原稿締切前日の26日、本人の言葉での声明
で、違法賭博関与を完全否定した。大谷の表情には、ショックより、悲しさと怒りを感じた。
しかしながらファンの一人として大谷の今後のプレイが心配。一刻も早く、手術後の完全回復
と大活躍、併せてホームラン、ピッチャーとしての来期の快投も見たい。